FIREという言葉を知ったのは、6年ほど前のことでした。
きっかけは、両学長のリベラルアーツ大学というYouTubeチャンネルです。
資産を築いて、会社に縛られずに生きる。
働くかどうかを、自分で選べる。
時間の使い方を、自分で決められる。
そうした考え方には、たしかに惹かれるものがありました。
ただ、当時の私はそこまで切実ではありませんでした。
投資はしていましたが、それは老後のための貯蓄と、子どもの学費への備え。
定年まで働くことに、何の違和感も持っていませんでした。
その考えが変わったのは、ここ1年のことです。
異動がありました。
それまでの比較的ゆとりのあった職場から、一気に長時間労働の職場へ変わりました。
朝は子どもが起きる前に家を出て、夜は寝た後に帰る。
平日に子どもと会話する時間が、ほとんどなくなりました。
仕事の内容はダイナミックで、やりがいがないわけではありません。
でも、ふと思ったのです。 これは自分が求めていた人生だったのだろうか、と。
子どもの成長を見守れる時間は、今しかない。
その「今」を、仕事にすべて渡してしまっていいのか。
そう考えるようになったとき、FIREという言葉を改めて思い出しました。
今日は、家族がいる人にとってFIREは何を目指すべきなのか。 今の私なりの考えを書いてみたいと思います。
FIREにはいくつかの形がある
FIREにはいくつかの分類があります。
たとえば、大きな資産を築いて余裕ある生活を目指すファットFIRE。
FIREと聞いて、多くの人がまず思い浮かべるのはこの形かもしれません。
生活費を極限まで抑えて早期リタイアを目指すリーンFIRE。
資産収入に加えて、少し働くことを前提にしたサイドFIREやバリスタFIRE。
考え方としては、どれも一つの選択肢です。
ただ、家族がいる立場で考えると、どれも同じように目指しやすいわけではありません。
それぞれに、現実との距離があります。
ファットFIREへの憧れと、リーンFIREへの違和感
ファットFIREには、やはり夢があります。
お金の心配をせずに暮らせる。
時間も選択肢も広い。
できることなら、そこに届けば理想的だと思います。
でも現実には、経営者でも高収入層でもない会社員の私にとって、
そこまでの資産を築くのは簡単ではありません。
子どもがいる家庭では、教育費や住宅費など固定費が大きくなります。
生活コストを抑えやすい独身の方と比べると、条件はかなり違います。
憧れを否定する必要はありません。
でも、そこだけを理想像にしてしまうと、現実との距離に苦しくなることもあります。
一方で、リーンFIREのように生活費を極限まで下げて早期リタイアを目指す考え方もあります。
理屈としては分かります。
必要な生活費が少なければ、必要な資産額も下がります。
ただ、家族がいる場合、節約の負担は自分一人では済みません。
食費を削る。
住環境を削る。
子どもの体験を削る。
教育費を削る。
無駄を見直すことは大事ですが、削ることが中心になると、
家族全体の満足度まで下がってしまうことがあります。
お金は減らせても、心の利回りまで下がってしまっては本末転倒です。
早く仕事を辞めることだけを目指して、家族の暮らしを犠牲にする。
少なくとも私には、それはしっくりきませんでした。
私がサイドFIREに可能性を感じた理由
FIREを改めて意識するようになったとき、私が最初に考えたのは
「今の資産で会社を辞めても生きていけるか」
ということでした。
正直に言えば、節制すればなんとかなりそうな気もしました。
でも、不安は消えませんでした。
もし辞めたら、共働きの妻への負担が大きくなる。
子どもの将来にかかるお金も、まだ見えきっていない。
「なんとかなりそう」と「安心できる」の間には、想像以上の距離がありました。
そんな中で改めて目に入ったのが、サイドFIREやバリスタFIREという考え方でした。
資産収入だけで完全に暮らすのではなく、ある程度の資産を土台にしながら、
働く量や働き方を調整していく生き方です。
この形のよさは、極端ではないことだと思います。
仕事をゼロにしなくてもいい。
でも、会社だけに人生を預けなくてもいい。
収入源がひとつだけではないことで、心の余裕が少し生まれる。
社会とのつながりも保ちやすい。
私自身今すぐ会社を辞めるつもりはありません。
代わりに、インデックス投資を月7万円積み立てながら、少しずつ土台を積んでいく。その延長に、働き方を選べる未来がある。
全部を捨てるのではなく、全部を背負い込みすぎない。
その中間に、家族がいる人にとっての現実的な自由があるのではないかと思っています。
資産は「辞めるため」ではなく「選べるようにするため」にある
資産形成をしていると、つい「いくら貯まれば辞められるか」という発想になりがちです。
でも最近は、少し違う考え方をするようになりました。
資産は、すぐに仕事を辞めるためだけのものではありません。
むしろ、働き方を選べるようにするためのものだと思っています。
たとえば、少し仕事を減らす。
心がすり減る職場から離れる。
収入は下がっても、家族との時間を優先する。
そうした選択がしやすくなる。
追い詰められているときほど、人は「辞めるか、耐えるか」の二択になりやすいものです。
でも、ある程度の資産があれば、その間にもう少し幅ができます。
週5日を週3日にできないか。 別の働き方はできないか。 一度立ち止まれないか。
その余白があること自体が、すでに大きな価値なのだと思います。
心の利回りで考えるFIRE
このブログで大切にしている「心の利回り」という言葉で考えると、FIREの見え方も変わってきます。
心の利回りとは、お金の損得だけでは測れない、人生の満足度のことです。
そう考えると、家族がいる人のFIREは、資産額を最大化する競争ではないはずです。
子どもと過ごせる時間があるか。
家庭の空気が穏やかか。
無理をしすぎずに暮らせているか。
将来への不安に押しつぶされずに済んでいるか。
お金があっても、家族との時間がなく、心がすり減っている。
それでは、心の利回りが高いとは言いにくいかもしれません。
反対に、収入は少し下がっても、家族と笑う時間が増えて、自分の人生を自分で使っている感覚が戻ってくる。
そういう状態の方が、その人にとっては豊かさに近いこともあると思います。
家族がいる人のFIREが目指すべきなのは、「完全リタイア」そのものではなく、
暮らしを壊さずに、人生の主導権を少しずつ取り戻すことではないでしょうか。
まとめ
ファットFIREには憧れがあります。
でも、家族がいる立場では現実的に遠いことも多いと思います。
リーンFIREは必要な資産額を下げやすい一方で、家族の暮らしや満足度まで削ってしまう可能性があります。
家族がいる人にとって現実的なのは、
サイドFIREやバリスタFIREのように、資産と労働を組み合わせながら自由を広げていく形ではないでしょうか。
私自身、まだ途中段階です。
働き方が変わり、子どもとの時間を失ったことで、初めて本気でこのことを考え始めました。
それでも今は、
「働かない自由」
より、
「働き方を選べる自由」
の方に価値を感じています。
そして、その自由こそが、心の利回りを高める生き方につながるのではないかと思っています。

コメント